オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

いつか二人で⑥

toriadecafe.hatenablog.com

 

ワーキングホリデービザが切れてしまい
美佳は、ビジタービザでカナダに残るしかない。
仕事も出来ない
ただ、デビットと一緒に居る。

それだけ

デビットは婚姻関係が破綻しているとはいえ
美佳は、ただの同棲とは言えない
後ろめたさを何となく感じていた。

でも、一緒に居たい。
じき、離婚も成立する。
そう思う事で、うしろめたさを抑えこんでいた。

カナダで出来た日本人や異国の友達は
皆ほとんど、自国へと帰っていた。
唯一、カナダに高校から留学してきて
今は大学院生の佐和子だけが、カナダでの唯一の友達だ。


毎日、何もする事がなく
家でボンヤリ過ごす日々の中
佐和子が、手土産のお菓子を持って遊びに来た。
アネゴ肌で、いつもストレートに何でも言う佐和子は
「いつまで、カナダに居るのよ。
 ビザ切れたんだから、さっさと帰りなさい」と冗談ぽく言った。
そして、少し真顔になって続ける。

「ねぇ、美佳
 デビットってさ
 ハッキリ言って、外見あんたのタイプじゃないでしょ。
 もう30過ぎなのに、仕事らしい仕事してない
 貯金はない
 別居してるったって、結婚してる
 優しい…って言ったって
 それだけじゃ…ね。
 わたしさ、美佳みたいなパターンのカップル何組か見てきてるんだけど
 結局、うまく行かないんだよね。
 好きっていったって、生活となったら色んな問題出てくるよ。
 こんな事言ったら悪いけど・・・
 美佳
 もし、これがさ日本人の男だったら
 デビットのような人と付き合ってた?」

美佳は、何も言葉が出てこなかった。


恋愛や結婚は、外見とかお金とか地位・名誉じゃない
なんて言ってみても
あまりに、何も無さすぎなデビット。

「でも、好きだから一緒に居たいの」
と、唯一の友に言いきる事が出来なかった。

それでも
「もうすぐ、一緒になれるよ」
という、デビットの言葉を
今は信じるだけだった。

何もする事がない暮らしも2カ月を過ぎようとしていた。

シェアメイトのスーザンは、1カ月前にカレッジを卒業し部屋を出ていった。
今は、美佳とデビット二人暮らし。
スーザンと家賃を折半していた分が、すべてデビットの負担となり
日々の食事が一気に質素になった。
そんな中
いつもより早く、デビットが帰宅した。
あきらかに様子がおかしい。

「どうしたの? デビット」

デビットはバスルームに入り、しばらく出てこない。
やっと、出てきたかと思ったら…

「美佳、実はさ…バイト、クビになった!」

「ちょっと待って、デビット
 どうするの?
 次の仕事、何とかなるの?」

矢継ぎ早に、美佳は
明日からの暮らしを不安に思い
デビットに、どうするのか?と問いかけ続けた。

「美佳、それで考えたんだけどさ
 日本に帰ってくれないかな」

その言葉は、美佳の胸に激しく、痛く突き刺さった。

「どうして?
 どうして? 一緒に居るって言ったのに」

「もう、限界だと思うんだよね。
 あ…誤解しないでくれ、美佳!
 二人の関係が限界とかじゃなくて
 今、生活する事がだよ。
 ハッキリ言って、今の状況だと君にご飯を食べさす事が出来ない。
 とりあえず、ここも出て
 僕は友達のトコに、しばらくステイする。
 だから、君を呼べる日まで日本で待っていて欲しい」

あまりに寂しく、情けない言葉。

それでも、美佳はまだ信じたかった。
これを超えれば
「いつか二人で」堂々と一緒に居られる
そういう日が来る…

たぶん、そう待たずに、その日は来るに違いない

美佳は、デビットの言う通り
日本への帰国の段取りをし、1週間後
空港に居た。

美佳とデビット
二人は空港で何度も抱き合い
唇を離すことが
出来なかった。

その感触を、忘れないように
言葉も交わす事なく
抱きあった…to be continued.

 

https://youtu.be/37JZ0Fw95ngS
SING LIKE TALKING「離れずに暖めて」

さて、次回は最終話。
この恋、どうなると思います?

 

TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

toriadecafe.hatenablog.com