オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

語られる過去⑤

toriadecafe.hatenablog.com

 

ジェシーの「正式な恋人」になり
一年の月日が流れた。
小百合は、カレッジを念願通り1年で卒業し
運良く就職先を見つけ就職した。
こんなにラッキーな事が続くものかと思ったが
就職した会社で、4か月の仕事を終えた時点で担当のマネージャーから

「あなたは、真面目だし 仕事の飲み込みも早いから
 このままウチの会社でワークビザを引き続きサポート
 してもいいから、居て貰いたいの」と言われた。

このまま行けば、自力で永住権を取る事も夢じゃない。
早くこの事を、ジェシーに伝えたいと思っていたが
このところ彼も仕事が忙しく
週末にゆっくり伝えようと、小百合はその時を待った。

恒例の、週末のDVD鑑賞。
そして、お互いの色んな報告・雑談と
時間がいつものように過ぎていく。

「ね、ジェシー。すっごいニュースがあるのよ!
 私ね、会社から引き続きワーク(ビザ)を支給して貰えそうなの。
 だから、これだったら自力で永住権取れるわ!
 もっと、仕事頑張ってみたいような気持ちもあるし
 頑張ってみようと思うの」

すると、ジェシー
「すごいよ!」
そう言ったものの、少し顔を曇らせた。

「僕にも、手伝わせてくれよ。
 僕じゃ、ダメなのかな?
 僕と、結婚して永住権取るっていうのじゃ
 ダメなのかな?」

どれ位の沈黙があっただろうか。
「恋人になって欲しい」と告げられた時よりも
小百合は、驚いた。

「えっと…
 それって
 結婚する?
 結婚しようってこと?」

小百合は半信半疑で、やっと小さな声で呟いた。

「でもね、私 永住権の為にとか…」と言いかけると

「もちろん、わかってるよ。
 永住権の為に、僕と結婚するとか…
 そういうの、いやなんだよね?
 でも、実際 そうじゃなくて 
 僕が君と、これから
 これからの人生ずっと一緒に居たいから。 
 もし、君も同じなら
 オプションで永住権なんだよ」
と、急に照れくさそうに、恥ずかしそうに
ジェシーは笑いながら言った。

小百合は
「私でいいの?」と言いながら
その後、何故か泣き続けた。

2週間後、ジェシーの実家近くのレストランで
ジェシーの両親、妹、そして親友だと言う
ダン、ロジャーと婚約披露を兼ねた食事会をした。

ジェシーの家族とは、小百合はそれまで何度か会っていて
十分にコミュニケーションが出来ていた。

「サユリが、ジェシーのお嫁さんになってくれるなんて
 本当嬉しいわ。
 ジェシーより私の方が、幸せを感じてるわ」
ジェシーの母が、大袈裟にそう言って
大きな笑顔を見せた。

国際結婚で、周りには相手の家族との間で
苦労をしている友達も見ている。
それを、思うと 
小百合は何もかも恵まれている。

「サユリ、ジェシーの事が無くても
 私たちは サユリの親のような気持ちでいたからね。
 本当の親になれる事を、誇りに思うよ」
ジェシーの父親が穏やかな表情で、優しい言葉を掛ける。

何もかもが、順調で怖いくらいだ

食事会を終えて、ジェシーの家族とハグや別れの短い会話をした後
小百合は、ジェシーの友達二人にも挨拶をした。

「僕たちも、本当に良かったって思ってる。
 ジェシーが、君と暮らし始めた頃は
 あいつ、結構”落ちて”いたからな…
 色んな事がありすぎたし」

そう、意味深げに言った後
「今度は、結婚式で」と言い
その場を去って行った。

小百合は、何か引っかかりを感じた。
自分が、あの部屋に初めて入った時に感じた
「影」が彷徨った。

でも、それは過去。

しかし、その「影」は
小百合のなかで、どんどん膨らんでいった…to be continued.

 


徳永英明月のしずく」(2007)

この影は、ちょっと厄介な影… |ω・`)コソ

TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

toriadecafe.hatenablog.com