オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

クリスマスの恋人⑪

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「あれ、中村?」

その声に顔を上げると
大学のゼミとサークルで一緒だった田口だった。

「田口君!?・・・え?」

「中村に会うなんてびっくりだよ~。
いやさ、最近この駅の近くに引っ越してきたんだけど
このファミレス、今日初めて入ったんだよー。
いやーまさか、中村に会うなんて!」

啓子は、自分もこの近くに住んでいると言うと
二人驚くと共に
22年ぶりの再会を喜び合った。

田口とは、大学時代
何かと一緒になる事が多く
話していて楽しく、気が合った。
まるで、あの結婚すると思っていた“政幸と同じよう”な
男女を超えて
意気投合出来る、そんな存在だった。

卒業後、何回か友人等と一緒に会う事があったが
その内、疎遠になり何処にいるかもわからずにいた。

それが、22年の時を経て
偶然にもクリスマスイブの日に再会した。

コーヒーのおかわりを何度もして
気が付くと、2時間半も話していた。
そして、話が途切れた。

「中村、クリスマスイブに真っ直ぐ帰宅かぁー」
面白がるように、田口が言う。

「そういう、田口君だって…
 あ! もう、御結婚されてるのか…な」

「いやいや、これがさ情けないけど、まだ独りなんだよ。
 先月まで、13年シアトルに赴任してて。長すぎた赴任に
 気がついたら、まだ一人だよ」

「そうなんだ・・・」と妙子は言い
しばらく、また話が途切れた。

「私ね、どうしようもないんだぁ」

そう言って、去年のクリスマスの日の事
それからの、落ち込んだ自分の事
そして、ホストクラブ通いをし
ほとんど、貯えを使い果たしてしまった事。
何で、そんなみっともない話をしているのか…
自分でも不思議だったが

啓子は話し続けた。

田口は、それをずっと黙って聞いている。

一通り話し終え、啓子は話の〆をした。

「ね、馬鹿なオンナでしょ。私って」

田口はなおも、黙っている。
そして、ちょっと考えるように下を向き
手を合わせると
しばらくして、顔を上げた。

「ま! まだ良かったよ。
 借金までして、のめり込まなくて良かったじゃないか。
 それに…
 自分で、気づいたんだろう。色んな事に。
 だったら、もうさ。うつむくのやめろよ!」

その言葉は、職場の大山の言葉と重なった。

「私、何で 
こんな事、田口君に話しちゃったかな・・・」

啓子は苦笑いをした。本当は泣きそうだった。
でも、全てを洗いざらい話し
心なしかスッキリしていた。

「なぁ、中村
 俺と結婚しないか?」


突拍子もない!とは、こういう事を言うのだろう。
あまりに、突拍子もない、突然のプロポーズ。

大学時代だって、付き合っていた訳じゃない。
当時、恋愛感情があったか、なかったかと言うと
どちらとも言えない・・・
お互い、そんな存在だったはず。

それなのに

交際ゼロ日で、啓子は求婚をされたのだ。
まさに、晴天の霹靂。

啓子はどう答えたらよいものか、心が一気にざわついた。
しかし、案外と簡単に答えは出た。

啓子は、窓の外にちらつく雪を見ながら
あえて、田口から目をそらして言った。

「出来ないよ。私・・・

 田口君とは
 結婚出来ない」

 

啓子と田口、二人の間にはしばらく沈黙の時が流れた…
to be continued.

中島美嘉雪の華」(2003)


しんみりですな~。
みっともない自分をさらけだして!からの
突然のプロポーズキターヾ(°∀° )/ー!

どうなる、啓子~どうする、啓子。
明日はやっと(〃艸〃) 最終話。

TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

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