オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

箱の中の約束⑤

toriadecafe.hatenablog.com

 

この一年余り
毎日のように、涼子とリチャードは“箱の中”のデートを重ねてきた。
リチャードが来日し友人の家に滞在している間は
それも小休止となった。

リチャードから
二人だけで「過ごしたい」とタイプされてきた言葉が
涼子は頭から離れなかった。
単なるデートではなく、たぶん
その言葉が意味する事はリチャードと一夜を共にする事。

つい、この間まで
画面の中にだけ居たリチャードという男性が
リアルな存在
そして「男」として
自分の目の前に、今は居る。

頭の中では、実は色々事を想像した事はある。

もちろん、彼に抱かれる
それも、想像したのだ。

けれど、それはドラマの一場面のようで
現実にはあり得ないと思った。

しかし、今…会えない時間が募っていくと
涼子は、次第にリチャードが恋しくなってきた。

いつもの時間に、ビデオ通話を立ちあげてみても
彼は、そこには来ない。

わかっているのに、画面の中でぼんやりと涼子は待ち続けた。

そして
「リアルの彼に会いたい」と初めて
心の底から思いがこみ上げた。


リチャードが鎌倉から東京に戻った。
今度は息子の俊哉が、明日は子供キャンプに行ってしまうので
今日は3人で遊園地に行く事になった。

「通訳が居なくて大丈夫だろうか?」
その心配は杞憂に過ぎなかった。

会話らしい会話が出来る訳じゃないが
片言の英語と
目と目が合い
笑いあって
それだけで、伝わってくるものがあった。

明くる朝、涼子は俊哉を子供キャンプの集合場所に見送りに出た。
そして、その足でリチャードが宿泊している
箱崎のホテルに向かった。
昨日よりも、お洒落をしていた。
特別な日になりそうな
そんな、気がしていた。

リチャードがホテル前に立っている。
すると、彼は一枚の紙を差し出した。
誰か、書いてもらったのだろう。

「今日は、違う場所に宿泊しましょう」

タクシーに乗り、辿り着いたのは六本木にある高級ホテル
名前だけは良く知っているが、今の生活では
一生泊まるチャンスなどないようなホテル。

また、リチャードが紙を一片差し出した。

「いつも、子供の為に頑張っているのだから
 今日はゆっくりしてください」

こんなに、私を大事に思ってくれた人は
今まで居ただろうか

涼子は、涙が溢れてきそうなのを必死に止めながら
リチャードのやさしい気持ちに、自分のすべてを持っていかれる感じがした。

ホテルの部屋で、二人はノートパソコンを開いていた。
一見、おかしな光景だ。
いつもと違うのは
“二人並んで”パソコンに向かいながら
翻訳ソフトを使って、会話をしている。

時には、声を立てて笑ったり、驚いたり。
そして、リチャードの事をもっと色々と知る事が出来た。

小さなアンティーク調のモーテルを買い取り
そこを改装して住んでいる事。
車を3台持っている事。
男やもめなので、毎日お手伝いさんが来る事。


とにかく、彼が経済的には相当に裕福である事が窺えた。

特に、見せてもらった家の写真は、涼子にはとても魅力的に見えた。
まるで外国映画に出てくるような家・部屋・家具。

「こんなところに、住んでみたいわ」
涼子は、思わずタイプした。

すると、リチャードが


「僕は、涼子が来たいと言うなら
 その望みを叶えてあげられる」と箱の中で呟いた。

ホテルの部屋から見える
東京の夕闇に包まれながら
二人は自然に、身も心も合わせていた。

そして
そこに、言葉は必要なかった。
... to be continued.


Lee Ann Womack - I Hope Your Dance (2000)

 (o゚□゚)o≪≪≪ワアァァァァァァッ!!
言葉がほとんど通じない
「箱の中」の二人、どうなるんでしょうね。
この二人というか
涼子にハッピーエンドはあるのか!?

TORIA (o ̄∇ ̄)/

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