オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

箱の中の約束②

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掲示板の出会いから

やっと、リチャードと初顔合わせ出来たのは
ウェブサイトにプロフィールを投稿してから
1ヶ月半後。

何しろ、日本とカナダ。
正反対の時差に加え、涼子は子供の事を思うと
間際になって、リチャードとコンタクトするのを迷ってしまった。

そして、今日
リチャードとビデオ通話で対面する段になっても、迷っていた。

自分で自分の手の冷たさを確認しながら
PCの画面をしばらく見ていた。
通話ソフトを起動すると
涼子は、深くため息をついた。
その瞬間、驚くような大きい通知音と共に
画面に文字が浮かんだ。

日本語で「こんにちは」と、文字が並んだ。

涼子は、どうしていいかわからず
とりあえず、その挨拶に打ち返した。

「翻訳ソフトを使用。 私は遅くなる会話について」
意味が通じるような通じないような
単語の羅列だ。

なるほど、翻訳ソフトをリチャードは使っているようだ。

涼子には ”それが”彼の思いやりに思えて
急に胸が熱くなった。

「わたしはカメラを保持しています」

そして、しばらく経つとパソコンの画面の向こうに
思ったよりも若く見える、白人男性が
何処に視線を合わせていいかわからずに
キョロキョロしていた。

結局、それ以上会話らしい会話はなく
その日は、お互いの通話環境を確認だけだった。
涼子とリチャード
二人はまた別の日に、改めて話をする約束をし
”素っ気なくわかれた”。

次に話をする時は、やはりお互い顔が見えた方がいい
そう思い、涼子はウェブカメラを買った。

初めての出会いから3日後の22時。
涼子はすこしでも若く見えるようにと、夜遅くなのに
化粧をし直し、すこしオシャレをした。

約束の時間。
この前と同じように、通話画面に繋がり 
リチャードがテキストメッセージで声を掛けてきた。
今日は、涼子の顔も写っている。

リチャードは驚いた顔をして
次の瞬間、画面にまた文字が並ぶ。

「美しい、なんて! 貴女は美しい。
 私はいまだかつて、貴女のような美しい女性を見た事がありません」

涼子の人生のなかで、見聞きした事がない言葉が
目の前にある。
その言葉に、涼子は身も心も高揚していた。

毎日、仕事と家事、子供の世話の繰り返しで
誰かに自分を認めてもらったり、称賛される事など
全く無い暮らしをしている。

それが、お世辞だとしても
涼子には一粒の媚薬のようで
人として、女性として受け止めてもらえた気がした。


涼子は、リチャードにどんな仕事をしているのかと聞いた。
目の前の画面には、タイプするリチャードがいる。
涼子は、その姿をジッと見つめていた。

「私は公務員だった。でも、45歳でリタイアして
今は小さな会社をやっている。
実際は、働く必要もないのだが、時間を持て余しているから
会社をやっている…」

52歳 バツイチ独身
会社経営者

すべてが揃っていた。

お互いの身の上の事を、翻訳ソフトを使いながら会話し
また、次の日二人は

「箱のなか」で会う約束をした。
… to be continued.


角松敏生「Girl In The Box~22時までの君は」(1984)

早期リタイアしていて、お金を持っていそうな50代。
私など、ひねくれて性格悪いですから( ゜∀゜)アハハ
そんな、条件良さげな”紳士”
何か裏があるんでは!?なんて思っちゃうんですけど…

大丈夫か!? 涼子。

TORIA (o ̄∇ ̄)/

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