オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

箱の中の約束③

toriadecafe.hatenablog.com

 

初めてのビデオ通話での対面から
涼子とリチャードは、度々「箱のなか」で会うようになった。
最初は、週に1度程度だったのが
3か月経った頃には、ほぼ毎日夜10時から1時間
パソコンの前に座るようになり…。
その頃には、涼子は本名を打ち明けていた。

今日は涼子がずっと気になっていながら、聞けなかった事を口にした。

「リチャード、私は何で離婚したか話したけど
 あなたは何で?
 それと…子供はいるの?」

リチャードから、なかなか返事は返ってこない。

”何も、結婚を意識して聞いているわけではない!”
涼子はそう、自分に言い聞かせながらも
いけない事を聞いたようで
タイプした言葉を消してしまいたかった。

しばらくして、リチャードのからの返事が画面に映し出された。

内容は
価値観の違いで離婚に至り
子供は男の子が二人
二人とも20歳を過ぎている
自分の保護下には、すでにない
前の奥さんは、再婚して幸せに暮らしている

涼子は、その返事に
何故かホッとした。

何に対してホッとしているのか
自分で自分を探っていた。
そして、誰にという訳ではないけれど
二人の付き合いが「許された」
そんな気がした。

この頃から、急速に
涼子の気持ちはリチャードに傾いていき
リアル「会いたい」と思うようになった。

とは言うものの、リチャードが住むカナダ東部。
しかも、名前も聞いた事がない町は 
とんでもなく遠く
仕事の休暇を取って、行けるような所ではなかった。

「涼子、会いに行く いつか…」

そんな言葉を、何度もリチャードが書いてきた。

幸せで嬉しい一方
時々、この「箱のなか」の出来事は 夢の事
よく言う「バーチャル空間」での出来事なのだろうか?

そう、思う事もあった。

涼子は、早くに両親を亡くし
兄弟姉妹もいない。
こんな「非現実的な出会い」を咎めるものは 
周りに誰もいない。
そして、友達には
ここまで、自分が箱のなかにハマり込んでしまった事を
言えなかった。

止める者もない
止まる事のない思いは、加速していく。

どんどん、二人の時間だけが積み上がって行った。

一度も会った事がない
お互いの声も知らない
もちろん、触れ合ったこともない
二人とも「頭の中で出来上がった相手」を
愛し始めていた

初めての出会いから、1年半
リチャードから「会いに行くよ!」との言葉が。

涼子は、嬉しい一方
実際に会うとなると、不安の方が勝ってきた。

「本当のリチャード」と会う怖さ
そして「本当の自分」を見られる怖さ

もしかしたら、お互い
思っているような人間じゃないかもしれない
そう思うと、不安で一杯になった。

リチャードが、日本に来るのは2週間後。

そして、もしかしたら
それが、二人の関係の最後になるかもしれない
そんな思いも、持ち始めていた…to be continued.


Alana Davis - 32 Flavors (1997)

この曲好き💛*1ケラケラ

TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

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*1:´∀`