箱の中の約束①
＊これは、事実をもとに構成された”ハクションなおはなし”。
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「そろそろ時間だわ」
そう、独り言を呟いて
急いでパソコンのスイッチを入れた。
毎晩１０時、涼子は決まって６畳間の小さなテーブルの上に置いている
パソコンの前に座る。
隣の部屋では、息子の俊哉が寝息を立てている。
起こさないように、注意深く
息をひそめるようにキーボードを叩く。
ほどなくすると、パソコンの画面の中で手を振る男（ひと）がいる。
それは涼子の恋人、リチャードだ。
涼子は、日本
リチャードはカナダ
超遠距離の恋人同士。
でも、一度もリアルに会ったことはない。
涼子とリチャードが出会ったのは
ウェブサイトの「海外の人と友達になろう」という掲示板だった。
そこに、自分の簡単な自己紹介を載せると
「友達になりたい」という世界各国の老若男女が
メッセージを交換できるというものだ。
涼子は友人からの誘いで、気乗りしなかったものの
簡単な英語でプロフィールを入れた。
本名を名乗る訳に行かないので
Ｒｉｎ（リン）というハンドルネームにした。
バツイチ子供有りの３９歳。
英語は全く出来ません。
少しだけ、海外に興味があります。
それだけ、書いて 投稿した。
“こんなバツイチの子供がいる女に
コンタクトしてくる男などいるはずがない”
自分で、何の期待もしていないのに
こんなところにプロフィールを載せてしまった自分を可笑しく思った。
普段は、月曜から金曜まで
小さなブティックで販売員をしている。
離婚したのは７年前。
俊哉がまだ、３歳の時だ。
２年の交際を経て成就した”恋愛結婚”は
同じ年月を経て、壊れてしまった。
夫は、同僚の女性社員と浮気。その上、借金まであった。
結婚生活の破綻は、涼子を男性不信にさせ
離婚以来７年
女性ばかりの職場で
新しい出会いなど模索する事無く、生活してきた。
そんな涼子を見かねた友人が勧めてきたのが、例のウェブサイトだ。
「海外の男性は、いいわよ」
まるで、すごく経験豊富そうに
友人の由美が言う。
ウェブサイトへ登録した事は、しばらく頭からすっぽ抜けていた。
次にアクセスしたのは、登録から２週間。
メッセージ欄には、１件と記されている。
クリックして開くと…
「カナダ在住 リチャード ５２歳
名前は本名です
離婚歴あり
日本の女性と友達になりたいです
よかったら返信を下さい」
翻訳ソフトでも使ったのだろうか？
日本語で、そのメッセージは入っていた。
涼子は、これは冷やかしだと思った。
それなのに、何故か
久しく無かった、ドキドキする感覚が止まらない。
けれど、５２歳という年齢が引っ掛かった。
全く、どんな人かもわからない。
メッセージの着信日から１０日も経っている。
返事をしたところで、何も返ってはこないだろう。
このままスルーしておくつもりが
指は、もうタイプをし始めていた。
特別な期待もなく、翌朝ウェブサイトを見ると
早速、リチャードから返事が入っている。
「よかったら、ビデオ通話で一度お話しませんか？」
そこから、涼子とリチャードの
パソコンのなかの
いや…
箱の中の恋がはじまった。
…to be continued.
Crystal Kay - 恋におちたら(2005)
さぁ～今日からまた新しいストーリーが始まりました！
今時だと、アプリ婚活とかも珍しくなってきてますからね～。
今回の「恋」のゆくえはどうなる事か…お楽しみに♪
TORIA (o￣∇￣)/
