オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

人事課の女①~あるOLの回想

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わたしがその女を初めて見たのは、中途採用の面接の時だった。

歳は40代後半だろうか。
小柄で、痩せた華奢な体に
少し茶色に染め上げた髪を束ねている。
きっと、若い頃はかなり「可愛かったはず」だ。

そして

入社日の朝“この女”が
総務部人事課の課長だと知り、驚くのだった。

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「ねぇねぇ、人事課長の木村さんって
何か、不思議な感じしない?」

入社早々、いきなり話しかけてきたのは
わたしと同じように、5階の別の関連会社所属の渡辺さんだ。
何も相槌も返事もしていないのに
渡辺さんは、話し始めた。

「あの木村さんって、独身なのよ。
それも一度も結婚してないの。
まっさらシングルで、しかも!学歴は高卒よ。
それなのに、人事の課長までのし上がったの」

わたしは、返事にならぬような
「はぁ~」という言葉を漏らすと
一気に、渡辺さんがにじり寄り小声で今度は話し始めた。

あの人ね、副社長の女なのよ。
 女って言っても”現在形”じゃないのよね。
 まっ!過去に、そうだったって
 感じかしらね。
 きっと、よっぽどの事があって
 副社長は ”あの女”をわざわざ課長にしたのよ
 だって、この会社ってね、今時ありえないくらい封建的なのよ。
 女の“長”付なんて、後にも先にも 木村さんしかいないんだから!」

地味な会社の思いがけないゴシップ

当の木村さんは・・・というと
わたしからは 
四角四面なほど真面目な、中年女性にしか見えない。

明るくも、暗くもない
淡々と、仕事をこなし
女性社員には、わりと慕われている。
全くと言っていいほど、木村さんの悪口を聞くことはなかった。

だが、わたしには 
逆にそんな「パーフェクトな女」が不自然に見えた。

そして、いつからか
木村さんは

「人事課の優良課長」を演じている
そう思うようにさえ、なっていた。

入社から丁度半年たった朝。
出社すると、名前だけの社長のような
私の上司・片桐さんが
改まったように、わたしの席のところまで来て話し始めた。

「あのさ、今日からね2日間
 人事でフォロー研修があるからさ
 3階の会議室にいってらっしゃい。
 ま、研修って言っても あなた一人だからね・・・。 
 木村課長が担当だから、あとは 木村さんに聞いてもらえれば。
 ま! 頑張ってきなさい」

わたしは、出社早々に社長から背中を押され
3階の人事課に向かった。
まさか、この時
木村さんの「ココロの窓」を見るとは!

そして、見てはならぬ
「秘密のドア」に
手を掛けるとは、思いもしなかった。
... to be continued.


Robert Miles - Children (1996)

模範的といっていいような、人事課の女性課長に
どんな秘密がかくされているんでしょう。
続きをお楽しみに♪


TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

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