オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

調査部の男①~あるOLの回想

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わたしが朝、出社すると
わが関連会社の社長・片桐さんは出社している。
それは、いつもと変わらない。

しかし、朝イチバンから
片桐さんがわたしの傍に寄ってくる時は
たいてい研修に行けとか
他の部署に手伝いに行ってくれとか、そんな類の事だ。

「今日ね、申し訳ないんだけど
 3階の開発調査部の森さんがね
 4時まで大事な用事で外出しないとならないらしくてね。
 それで、あなたに 留守番で行ってほしいんだよ。
 本来なら、総務とかから留守番出してもらうんだけど
 株主総会で忙しいところに、事務の伊藤さんがさ
 休んじゃってるらしくてさ。
 それで、ほら あの次長になった木村さんが
 あなたなら、口が固そうだし
 他部署に手伝いに行っても大丈夫だって言ってさ。 
 ま、そんな事なんで、ちょっと行ってきてくれないかな。 
 3階の調査部に行けば、森さんがいるから
 森さんが色々と指示してくれるだろうから」
 
面倒な事を頼まれたな…と思いながら、私は席を立った。

3階に降りるためにエレベーターに乗ると
社内では「歩く東スポ」と呼ばれている
資材管理部の出口が先に乗っていた。

この男、年齢不詳
身長は驚くほど低く小太りだ。
年齢不詳であるものの、いつも話している感じから
入社25年は超えているだろうか。
何処のお国訛りなおのかわからない言葉で
とにかく、いつも突拍子もない世間話をしている。
そして、社内のゴシップを“そこここ”で喋りまくる。

そんなキャラの出口が、大手を振ってこの会社に居られるのは
昔から、労働組合で活動し
どこをどうして仕入れるのか
会社の役員たちの弱みを握っているからと言われている。

わたしは、厄介な人に出くわしてしまった!と思いながら
エレベーターに乗り込むと
軽く挨拶だけして、視線を上に走らせる。
しかし、出口はそんな事はお構いなしで、話しかけてくる。

「あんた、あの人事の木村さんに気にいられてるじゃろ」

「いえ、そんな事無いと思いますけど」

「いやー、そんな事ないだろ。
 今日あんた、調査部に手伝いやろ。
 それも、木村さんがあんた推したらしいからな」

確かに、出口は突拍子もない事を言いだす。
そして、3階に着いて
フロアーに出ても、出口はまだしゃべり続ける。

「あんた、ここだけの話だけど
 あの木村さんな、ほら次長になった
 あの人、高校しか出とらんのに次長だよ。
 それもこれも、ほら 
 この前死んださ
 前の副社長、三枝さんの女だったんだよー。
 もともと、三枝んさんと木村さんっちゅーのは
 付き合ってたのが、あの三枝さんが
 出世のために、上役の娘と結婚したんだよ。
 あ、それでなぁ・・・」

そこまで、出口が話したところで
わたしは、調査部の森に声を掛けられた。

この、開発調査部の森という男
出口とは対照的に、突拍子もない事が全く無さそうな
根暗な中年男。

調査部には、部長はおらず
事業部の部長が、部長職は兼務している。
そこで、森は調査部の唯一の社員として在籍している。

とくに、役職もない。
窓際なのか 
そして、何者なのかわからない。

わたしは、森の後ろについて
3階にある個室の調査部に入ると
その室内の様子に、驚き息を呑んだ…to be continued.

 


Daryl Hall & John Oates - Family Man (1982)

普通の会社の
フツーの話ほど
怖いものはないのです(ΦωΦ)フフフ…

 

TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

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