営業部の女②～あるOLの回想
わたしが調査部で、“あの電話”を取ってしまった頃から
何故か、にわかに
「ここだけの話！」と前置きが付きながら
石原美香子と営業部長・風間の不倫関係が噂になり始めた。
風間は、社内外でも「デキる男」で通っていた。
しかも、普通の中年オヤジじゃない。
それなりに見栄えも良く、エース物産の女子社員の中では
容姿も人柄も、憧れの上司ナンバー１と言われていた。
ちょっとクールな雰囲気がありながらも
冷静なようで、熱く仕事に当たり
決断力が冴え、責任感も強い。
女子社員にへんに媚びることもなく
その辺りが逆に、女子社員のココロを射止めていた。
当然「浮いた話」など皆無。
そんな風間が、美香子と不倫などとは
始めは、皆信じる者はいなかった。
しかし、ロッカールームで
美香子は小さな声で話しているつもりのようだ。
いや…それとも小さな声のフリをして、皆に聞かせているのかもしれない。
美香子は同期の中村に、風間との密会の日々を嬉しそうに話し聞かせている。
たぶん、隙間があったのだ。
男のココロの隙間
入社以来、風間は
花形と言われる支店や部署を渡り歩き
確実に「エース物産の勝ち組」の道を歩いてきた。
それは、言わずとも
自分でも自信であり
これからも
そうなっていくのが、当然だと思っていた。
ところが、半年ほど前
部下のちょっとしたミスから
一番の大口客であった、マルマル商事にライバル他社が入り込み
マルマルだけで、月に３千万円の売り上げが立っていたのが
この頃では、100万円を切る有様だ。
そして、この件を皮切りに
歯車が狂い始め
営業部全体の成績が振るわなくなっていた。
始まりは
ほんの１度きり
それが、始めで終わりのはずだった。
忘年会で、珍しく風間は飲みすぎ
帰り道すこし具合が悪くなっていたところを
美香子に介抱され…
二人は 家に帰らなかった。
ほんの１度きり
本当に１度きりで終わるはずだったのが
風間のココロは、狂わされた。
二人の関係が、噂になりながらも
誰も何も言うことは無かった。
何しろ、美香子が大手取引先かがやき物産の会長の娘だから。
彼女を、風間を咎める者は
誰も居ない。
風間が海外出張の時
美香子が有給を取り
一緒に行ったのではないか！？などとも噂されていた。
こんなフツーの会社で
小説やドラマの中でしか起こり得ないと思っていたような事が起こっていた。
けれど…
わたしは何となく感じていた。
「あの調査部」が目をつけている。
いつか、きっと
終わりがくるのか
それとも…to be continued.
Globe - Can't Stop Fallin' Love (2004)
まさに、この曲の歌詞のように
「人には話せない 誰かに話したい」なんでしょうな…。
社内不倫のゆくえ～明日には完結です！
TORIA (o￣∇￣)/
