オンライン講師が描く「ハクションな日常」

人生はハクション*くしゃみしたら吹き飛んでいくような

いつか二人で③

toriadecafe.hatenablog.com

 

日本に帰ってからの美佳は
再就職せず、フリーターとしてバイトを掛け持ちしていた。

小学校の教頭をしている父親には
「いったい、何を考えているんだ」と苦言を言われる中
密かに、ワーキングホリデーでカナダに行く事を計画していた。

周りの友達には、結婚する子も目立ってきた。
それを思うと、
「自分はこんなでいいのか…」と思いながらも
カナダの伸び伸びとして、自由な雰囲気の中で
次は、仕事をしたり
生活をしたいと思った。

時の経過の中で、デビットの事は薄れていった。
何度か、メールやメッセの遣り取りをするも
直接話すのと違って
テキストでは話が弾まず
ワーキングホリデーでカナダに行く頃には、音信普通となった。

さぁー!私のこの一年は、目一杯輝くんだから

三十路手前の一年間
カナダで、好きなように過ごしたら
その後は、ちゃんと就職するなり
”結婚”を考えてもいい
そう、美佳は決めた。

3か月の語学留学で過ごした
カナダ東部の町に辿り着くと
美佳は、懐かしさと同時にホッとする感覚に襲われた。

日本に居て、家族と一緒に居る時よりも
自分が解放されて、楽になっている。

最初の2週間、以前ホームステイしていた所でお世話になりながら、
住む所と仕事を探した。
仕事は、日本食レストランのウェイトレス
住む所は、なんと音信普通になっていた
デビットの所へ。

とは言っても”特別な事”ではなく
シェアメイト募集の案内にコンタクトすると
それがデビットだったのだ。

カナダでは、他人同士 
それも男女がシェアして暮らす事もある。
しかし、美佳は少し抵抗もあったので 
この後、ちゃんとした所を探そうと思っていた。

デビットと暮らすと言う事だけではなく
実は、この部屋には もう一人
カナダ人の女の子がシェアメイトとして住んでいた。
しかも、リビングとベッドルームの2部屋3人暮らし。

「デビット、何で こんな窮屈な暮らしをしてるの?」と聞くと


「お金無いからさ。 
 俺、学生ローンもまだ残ってるし
 なかなか良い職にもつけないから
 家庭教師したり
 バイト幾つかやったりして
 何とかやってる感じ。
 だから、シェアメイトがいれば、その分 家賃浮くだろ」

デビットが野暮ったく、要領も悪い。
外見だけじゃなくて、中身もイカしていない。

美佳は、デビットに対して
「良い人なんだけど、でもね…」
と心の中で呟いた。


カナダに来て1カ月が経ったある日
環境の変化による疲労が一杯になっていたのだろう。
美佳は、急な高熱と体中、不明の湿疹に見舞われた。
異国の地での体調不良
どうやって病院に行けばよいかもわからず
ルームメイトも帰ってこない部屋で
美佳は、泣きそうになりながらソファに横たわっていた。

すると、デビットがバイトから帰ってきて
美佳の異変に気付いた。
急いでタクシーを呼び、美佳を連れて救急病院に向かった。

病院での、診療までの長い待ち合いの時間
デビットは美佳を抱きかかえていた。
随分と長い時間、そうしていた。
言葉を発する余裕は二人にはなく
病院の待合室で長い時間ただ、診療の時間を待ち続けた。

処置を終えたのは、もう明け方近く。
結局、疲労と何らかの食あたりが原因だったようで
注射を施され、処方の薬を飲めば
数日中には回復するとの事だった。

処置室でも、デビットは美佳の手を握り
家に帰ってきてからも、あれやこれやと美佳の面倒を見た。
そんな、彼の”優しさ””温かさ”の中に
美佳は、心が落ちていった。

好きとか愛しているとか
そういうのとは、ちょっと違う

でも
この人といたい…
そう思った。

病院に行った日から5日経ち
やっと、湿疹の痕もほとんど見えなくなった。
その日は、シェアメイトのスーザンが友達の所に泊まるとかで帰らない。

明日は、デビットのバイトが休み
美佳は、体調不良のゴタゴタで早々にバイトを辞めていた。

「全てが仕切り直しだ!
 でも、デビットにお礼もしたいし
 今日は私のおごりで、楽しく飲もう」

と、つまみやビール、ワインを買い込んで
二人で 夜通し、映画を見たり話しこんだ。

そして、その夜
自然と二人 重なり合った... to be contiunued.


milet 「us」(2020)

 

異国でのアクシデントとやさしさに
ドボンと落ちた
女がひとり。

あぁぁぁぁぁ\(。⊿°)/

 

TORIA (o ̄∇ ̄)/

 

toriadecafe.hatenablog.com